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馬と人の古代史をたどる
要約
若狭徹著『馬と人の古代史』は、考古資料と図版を基に日本列島への馬の導入経緯、信濃・上毛野・西国などの馬生産の地域性、東山道を通じた搬送や馬祭祀まで三章で整理して解説します。
本文
本書は若狭徹氏による考古学的な報告で、評は倉本一宏氏が担当しています。日本列島にはもともと馬がほとんどおらず、好太王碑に刻まれた四世紀末から五世紀初頭の高句麗との戦いが契機となって馬が導入され、古墳に馬具が副葬されるようになったとされています。言語面では「うま(むま)」の訓や「駒」の語源に関する指摘が紹介されています。著者は長野(信濃国)出身で群馬(上野国)で研究を進めた考古学の専門家で、埴輪や発掘資料、図版を用いて分かりやすく説明しています。
報じられている点:
・列島への馬の導入が四〜五世紀ごろの外的要因と結び付けて論じられている。
・馬具の副葬や埴輪などの考古資料を基に、馬生産の地域差(信濃・上毛野・西国)が示されている。
・東国での馬生産と東山道を通した畿内への搬送経路のメカニズムが推定されている。
・牧や駅の発掘事例を通じて、古代の牧畜制度と馬の利用形態が整理されている。
・働く馬や戦う馬、蝦夷の馬、馬の祭祀(殺牛馬儀礼など)についても章立てで扱っている。
まとめ:
本書は考古資料をもとに、馬の受容から生産・利用、儀礼に至る流れを整理しています。生活や軍事、儀式における馬の役割が地域ごとに異なる点が示されており、平安期以降の変化や馬車・戦車の不採用といった未解明の問題は現時点では未定で、今後の研究でさらに議論される可能性があります。
